感染症とは

赤ちゃんは、生まれる前に様々な免疫を母体から授かりますが、これらは成長と共に減衰していきます。このような状態になれば、様々な感染症に罹患しやすくなります。そもそも感染症とは、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入し、それらが体内で増殖するようになると、発熱、腹痛、下痢などの症状が現れることがあります。インフルエンザやおたふくかぜなどの病気も感染症のひとつです。

とくに小さな子どもは、感染症に対する抵抗力が弱いということもあって、様々な病気にかかる可能性が高く、場合によっては生命に影響することもあります。このようなリスクを下げるには、あらかじめ予防接種を受けておくなどの対策が必要です。特定の感染症に対する免疫がつけられ、重症化のリスクが低減するようになります。

以下、子どもが罹患しやすい感染症には、以下のようなものがあります。

かぜ症候群

原因の大半はウイルス感染ですが、その種類は200種類以上あるともいわれています。よく知られているのは、ライノウイルス、旧型のコロナウイルスなどです。感染経路は、飛沫感染や接触感染です。

よくみられる症状は、のどや鼻等の上気道の炎症をはじめ、くしゃみ、鼻水・鼻づまり、のどの痛み、咳や痰といったものです。そのほかにも、発熱、頭痛、全身の倦怠感が出ることもあります。これといった治療をしなくても乳児大は1週間程度、幼児は2~3週間程度で症状は軽快するようになります。

かぜが原因のウイルスに対しての特効薬はありませんが、ホームケアを行うとより楽に過ごせます。喉を冷やさないようにして、水分を多めに摂る、鼻をしっかりとかんだり、かめない子は鼻を吸ってあげたりしましょう。症状が強く出ている場合は、対症療法として、去痰剤・解熱剤などの薬物療法を行うこともあります。効果が低い・治りが遅くなる・1歳以上のお子さんに対してはハチミツの方が有効などの理由で、当院では咳止めのお薬は積極的にお出ししていませんが、咳で困っている方は気兼ねなくご相談ください。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染することで発症する呼吸器感染症です。同疾患は、冬から春の季節にかけて流行します。感染力が強く、飛沫感染や接触感染を経て、1~2日の潜伏期間を経てから発症します。

主な症状は、発熱(38℃以上)、頭痛、全身の倦怠感、関節痛や筋肉痛、寒気のほか、鼻水、咳、のどの痛み等、かぜのような症状も現れます。なお、子どもの場合は、肺炎やインフルエンザ脳症など、重篤な合併症を引き起こすこともあるので、注意が必要です。

治療に関しては、大半は安静にすることで自然と治癒するようになります。対症療法として、解熱剤や抗ウイルス薬・漢方等を用いることもあります。インフルエンザは「予防は最大の治療」を地で行く感染症です。インフルエンザワクチンを毎年予め打っておくと、感染する確率が半減する上、罹患した場合の症状も軽度で済むようになります。

風疹

風疹ウイルスを持つ患者さまからの飛沫感染が主な感染経路となります。2~3週間程度の潜伏期間を経てから発症します。

主な症状は、まずリンパ節に腫脹がみられ、頭痛や全身倦怠感、咳、鼻水の症状が現れます。さらに発熱と一緒に発疹が顔面から始まって全身に至るようになります。ただ発熱や発疹は3日程度で治まるので、3日はしかとも呼ばれています。ちなみに発疹が色素沈着になることはありません。一度罹患すれば、免疫を獲得するので再発することはありません。

ちなみに妊娠初期の妊婦さんが風疹に罹患すると、母子感染によって胎児にも感染し、先天性風疹症候群をもって生まれるというリスクが高くなります。この場合、白内障、難聴、先天性心疾患などが見受けられるようになります。お父さんの風しん抗体検査を行い、必要に応じてワクチンを接種すると、感染する確率が大きく下がります。

なお風疹は、特別な治療をしなくても自然に治癒していきます。解熱剤など薬物による対症療法を行うこともあります。

麻疹

一般的には、はしかと呼ばれています。麻疹ウイルスが原因とされ、主に飛沫感染によって感染します。感染力が非常に強く、同ウイルスの予防接種を打たなければ、大半は感染するといわれています。6~21日程度の潜伏期間を経てから発症します。

主な症状は、38℃程度の発熱をはじめ、咳、鼻水、のどの痛み等、かぜ症候群と似た症状がみられるほか、目やに、結膜の充血なども現れます。さらにコブリック斑と呼ばれる白い斑点が口の中で数十個ほど出るようにもなります。その後、発疹が数日程度出現するようになります。その後、熱は下がり、発疹は色素沈着を残して、消えていくようになります(最終的には色素沈着も消えていきます)。

また合併症のリスクとして、脳炎や肺炎、中耳炎、クループ症候群があります。ちなみに脳炎や肺炎は重症化することもあり、可能性として死に至ることもあります。

治療をする場合ですが、対症療法が中心です。この場合、主に解熱剤などの薬物療法が行われます。重症のお子さんの場合、抗ウイルス薬を使う事もあります。

おたふくかぜ

正式な疾患名は、流行性耳下腺炎になります。発症原因は、ムンプスウイルスです。罹患者からの飛沫感染もしくは接触感染によって感染し、2~3週間の潜伏期間を経て発症します。学童期の小児が罹患しやすいのも特徴です。

主な症状は、発熱と耳下腺(耳から顎にかけての位置にある唾液腺)の腫脹や疼痛(片側の場合もあれば両側で起きることもあります)です。腫れのピークは発症から2日程度で、1週間程度は腫脹がみられます。ちなみに感染しても発症しない方は3割程度いるといわれています(不顕性感染)。

なお同疾患のリスクとしては合併症を引き起こすことがあります。なかでも無菌性髄膜炎は、発症者の1割程度に現れるといわれています。強い頭痛がある、高熱がずっと続くという場合は、その可能性も疑われます。このほか、治療不可能な難聴・男性不妊に繋がる精巣炎などを併発することもあります。これらのリスクを避けるためにも、おたふくワクチンの接種を強くお勧めします。

おたふくかぜに対する有効な薬はなく、発熱や痛みが強くみられている場合は、解熱鎮痛剤等の薬物療法を行います。

手足口病

乳幼児に発症しやすいウイルス感染症で、接触感染や飛沫感染によって感染します。エンテロウイルスなどが原因ウイルスとされ、3~5日の潜伏期間を経て発症するようになります。夏の季節によく見受けられます。

主な症状は、手のひらや足の裏の小さな水疱と口内の前方にみられるとされる水疱です。ちなみに口内の水疱が破れて、潰瘍化すると口内に痛みが出ることもあります。発熱はある事もあれば、ない事もあります。

治療は対症療法を行い、冷たい食事や飲み物であれば、喉を通りやすいです。手足の水疱は数週間残る事がありますが、登園・登校に支障はありません。

ヘルパンギーナ

手足口病と同じく、エンテロウイルスを代表としたウイルス群に感染することで発症します。主に飛沫・接触感染が感染経路とされ、2~4日の潜伏期間を経て、発症するようになります。夏季によくみられる病気です。

主な症状ですが、発熱と口の中の後ろ側(軟口蓋 等)に水疱や口内炎ができるようになります。手足口病との大まかな違いは、手足に水疱があるかどうかになります。発熱は高熱が多く、5日間続く事がありますが、3日間以上続く場合は受診をお勧めします。

治療に関してですが、ウイルス感染によるものなので、特効薬はありません。のどの痛みが強いと脱水症状になるケースもあるので、水分補給は冷たいものを中心に摂りましょう。対症療法として、発熱や痛みを抑えるために解熱鎮痛剤を使用します。

水ぼうそう

水痘ウイルスに感染することで、体中にかゆみのある発疹や水ぶくれがみられる状態を一般的には水ぼうそう(正式な疾患名は水痘)といいます。飛沫感染と空気感染が主な感染経路で、2週間程度の潜伏期間を経て発症します。

主な症状ですが、かゆみの伴う赤い発疹が全身に現れ、発疹はすぐに水ぶくれに変わります。やがて水疱がかさぶたへと変化し、これが剥がれると完治になります。

治療は、外用薬はあまり有効ではないようで、抗ウイルス薬を使うことがあります。

猩紅熱(A群溶連菌)

A群β溶連菌と呼ばれる細菌に感染することで発症する感染症で、飛沫あるいは接触感染が感染経路となります。潜伏期間は2~5日程度とされ、幼児や学童の世代の子どもが発症しやすいといわれています。

主な症状は、発熱、のどの痛み、イチゴ舌、体幹・四肢を主としたやすり状の発疹です。無治療の場合は、リウマチ熱や腎炎を引き起こす事があります。

治療は主に抗菌薬の投与となります。近頃ではルーチンの尿検査は必要ありませんが。罹患後2週間は尿の色を気にかけ、おかしいと感じたら受診をお勧めします。